誰のために

「どうだったって、どういうこと?」

あからさまにイライラしながら長女は私に言い放った。


その日私は1日バタバタしていて、夕ご飯の支度がまだ出来ていなかった。
たまたまオットが早く帰って来たので、長女の迎えに行ってもらった。

食卓を囲みながら、私は長女に尋ねた。

「バレー、どうだった?」

そんな質問はいつものことで、ある時は長男や次女に言葉を変えて投げかけられるもので、その日が特別だったわけではない。
しかし、この日の長女の反応は全く違ったものだった。

それが冒頭の言葉だったのだ。

確かにその日彼女はイライラしていた。
ハードな練習に疲れて帰ってきたのに、夕飯の準備を弟たちが手伝わないことに腹を立てていた。

食事をしながらも、周りにトゲトゲしい態度をとっていた。

そんな感じで飛び出した言葉だった。

しかし、私も見逃すことが出来なかった。

疲れているのは分かるけど、その言葉はないだろう。
そんなに周りに当たり散らすなら、いっそやめてしまえばとぶちまけた。

私の方にも言い分がある。
長男とキャッチボールをしていても、長女をバレーに連れて行く時間となり、中断せざるをえなくなる。
長男にはブツブツ言われながらもそんな彼を置いて、私はハンドルを握る。

そんな犠牲も払いつつ、多いときは週に5日も長女の送迎をしているのだ。

やってあげているくらいに思っているのなら、やめてしまえと私は言い放った。
本当にやる気があるのか、明日までに答えを出し、やりたいのなら二度とそんな態度をとるなと。


長女は涙ぐんだが、何も言わなかった。

そんな様子を黙ってみていたオットは、お風呂の時にこっそり長女に声をかけていた。

「寝るまでにはお母さんに謝っとけよ」


しっかり聞こえている。

次々と弟たちはおやすみと二階に上がり、それに伴いオットも上がっていった。

部屋には私と長女二人になった。
いつ切り出すのかと待っていたが、おもむろに長女は立ち上がり、部屋の中ほどにある階段へゆっくりと歩いていく。
私の目はテレビに向けられていたが、意識は長女に集中していた。

階段に一つ足をかけて、長女は小さな声で
「おやすみなさい」
と言った。

予想外の言葉に不意をつかれた私は、思わず
「おやすみ」
と言った。


しばらくして2階から降りてきたオットは、彼女の言葉を伝えた。
「謝らなかったけど、お母さん、お休みって言ってくれたから大丈夫」
と…

あまりにトンチンカンな言葉に、思わず吹き出してしまった。

許したわけではない。
不意をつかれただけなんだ。

不器用で、口下手な長女らしい出来事である。


次の日、長女はバレーをやりたいと言ってきた。


そんな話をバレーのお母さんにもらしたら、とても良い話を聞くことが出来た。
そこは長女と同じ5年生の女の子だ。
しかし、上に高校生や社会人になるお兄ちゃんがいる。
そんな大きなお兄ちゃんも、自分の用事で母親に送ってもらうときは「お願いします」、連れて帰ってもらうときは「ありがとうございます」と言うというのだ。
聞くと、スポ少をやっていた頃からそうしつけたらしい。

大切なことを我が家では省いていたと、ハッとした。
そうすることで、誰か他の人に送ってもらったときにも感謝の言葉は自然と出てくるはずだ。

帰ってすぐに長女だけでなく、子供たちに約束させた。


さて、私の話だが、小さい頃は習い事をいろいろやっていた。
しかし、正直なところやらされていると思って続けていた…
その中で好きな習い事もあったのだが、親に感謝しながら続けていたわけではない。
自分のことは棚に上げて、とんでもない親である。

昨日はピアノの日。
次女は忘れていたが、こちらから声をかけるときちんと言えた。
今日はバレーもソフトもある。
果たして長女は覚えているだろうか…
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by couturira | 2012-06-27 08:56 | 子そだて | Comments(0)
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